芸術学科の素顔

【イベント】創立90周年記念 芸術学科シンポジウムⅡ開催レポート

イベント芸学ライヴ(授業紹介)

多摩美術大学創立90周年を記念して、芸術学科では、卒業生を招聘した、全2回の公開討論会を開催いたしました。

今回は、2010年代以降に芸術学科を卒業したミレニアム世代の4名のゲストをお招きして、10月11日(土)に開催した第2回シンポジウムの様子をお届けします。

第1回のシンポジウムのレポートはこちらをご覧ください。

今回の登壇者の皆さんからは、まず現在のご活動の内容の紹介、そして芸術学科での思い出・印象に残っていることなどをお話しいただきました。

涌井智仁氏(2012年度卒業)には、これまでアーティストとして制作されてきた作品やキュレーションのプロジェクトなどをスライドで見せていただきました。在学時に所属していた安藤礼二ゼミでは、たとえ難しくてもまずは原テクストに立ち向かうことが強調されていたとのことで、それが現在の活動の一つの軸になっているとお話しされていました。

小林紗由里氏(2015年度卒業)には、東京国立近代美術館での仕事内容を紹介いただきました。また、在学当時、芸術学科で教授を務めていた長谷川祐子氏がキュレーションしたシャルジャ・ビエンナーレに関わった経験から現代美術の面白さを学んだことや、ゼミで実際に展覧会を企画した活動を振り返って、芸術学科は自身の関心を見つけ出していくことができる場所だったとのことでした。

マワタリトモ氏(2016年度卒業)には、在学中に立ち上げた音楽レーベル事業から、現在のアパレル事業やアートプロデュースの事業に広がっていくまでの活動を紹介していただきました。美大でしか学べないことを学ぶために入学したそうで、実際に芸術学科の授業を通じて、二項対立的なものの見方を離れることの重要性を学ぶことができたと振り返っていらっしゃいました。

石田彩氏(2021年度卒業、23年度大学院修了)には、千葉県立美術館で携わっている企画展示をご紹介いただきました。そして、学部から大学院にかけての家村珠代ゼミで作家とコミュニケーションしながら展覧会を作っていった経験や、大島徹也ゼミでアカデミックな研究の手法を学んだ経験が、現在の学芸員としての仕事に活きていることをお話しいただきました。

司会・進行を務めた小川敦生教授は、今回のご登壇者が在学当時からすでに芸術学科の教員だったこともあり、登壇者とのやり取りからは皆さんが学生時代から多方面で活躍されていたことが伺えました。また、涌井氏やマワタリ氏のゼミ担当教員だった安藤礼二教授からも、お二人との当時の思い出をお聞きすることができました。

フリーディスカッションでは、「芸術学」に取り組む「芸術学科」とはどのような学科なのか、そもそも「芸術学」とは何かをテーマに、登壇者の皆さんそれぞれの立場からの見解を伺いました。

また、近い世代の先輩ということもあり、会場の在学生からは多くの質問が寄せられました。とりわけ、制作や研究をする上で現代ではさまざまな意味で不可欠な存在となっているインターネットの活用をめぐる質問に対しては、皆さんがこれまで実際に直面してきた課題や難しさを率直にお話しいただきました。

時間の都合により、約3時間でシンポジウム自体は終了となりましたが、終演後も個別に登壇者の皆さんに質問する学生たちの姿が印象的でした。